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非接触センサとは

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非接触センサは、対象物に触れずに距離・位置・有無などを検知するためのセンサです。接触による摩耗や汚れの影響を避けられるため、FA(工場自動化)を中心に幅広い現場で活用されています。

一方で方式が多岐にわたり、対象物の材質・設置条件・必要精度によって最適解が変わります。本記事では代表的な種類と、用途別・仕様別の選び方を整理します。

非接触センサの種類

非接触センサは、光・電磁気・音波などの物理原理を利用して検知します。まずは代表方式の特徴を押さえ、得意・不得意を把握しましょう。

非接触センサは「何を測りたいか」と同じくらい「何に弱いか」を理解することが重要です。例えば光学式は高精度でも外乱光や粉塵で不安定になり、超音波は色に強い一方で角度や温度で誤差が出ます。

方式選びでよくある失敗は、性能表の最大値だけを見て導入し、現場条件で再現できないことです。対象物の材質や表面、周辺環境まで含めて原理レベルで相性を見極めると、後戻りが減ります。

ここでは代表的な3系統である光学式、近接センサ(誘導・静電容量・磁気)、超音波式について、向く用途と注意点を整理します。

光学式(レーザー変位・ラインレーザー・白色光干渉)

光学式は、光の反射や干渉、三角測量などを使って距離や形状を測ります。高分解能で応答も速く、精密な位置決めや微小な変位計測に向きます。

レーザー変位センサは、点で狙った距離や高さを高精度に測りやすく、振動や微小段差の検出にも使われます。ラインレーザーは線状に照射して断面形状を一度に取得できるため、幅方向のうねりやエッジ形状の確認など、プロファイル取得に強みがあります。

白色光干渉は、微小段差や薄膜厚みなどナノ〜ミクロン領域の高精度測定で活躍します。ただし、反射率の低い対象、透明体、鏡面や粗面など反射状態が極端な対象では信号が不安定になりやすく、外乱光・粉塵・ミストの影響も受けます。現場では遮光、エアパージ、受光量の余裕確保といった“測れる状態を作る設計”が品質を左右します。

近接センサ(誘導・静電容量・磁気)

近接センサは、一定距離内への接近や存在を非接触で検出する用途で定番です。距離の連続値よりも、確実にON/OFFを取りたい場面で強みを発揮します。

誘導(インダクティブ)は金属検出に強く、油や粉塵がある環境でも比較的安定します。金属ワークの有無検出や位置決めで使いやすい一方、対象が非金属だと基本的に検知できません。また金属種や形状で検出距離が変わるため、対象が変わる工程では実機での確認が重要です。

静電容量は樹脂・紙・ガラス・液体など非金属も検出でき、容器外側から内容物の有無を見る用途でも使われます。その反面、湿度変動、付着物、周囲物体の影響を受けやすく、しきい値設定と取り付け条件で安定性が大きく変わります。磁気(ホール等)は磁石や磁界を使った位置検出に適し、回転・位置フィードバックで強い選択肢です。磁石の固定方法や外部磁界の影響まで含めて設計すると、誤動作を減らせます。

超音波式

超音波式は、超音波を発射して反射が戻るまでの時間(ToF)から距離や有無を検出します。光学式と違って色や反射率の影響を受けにくく、黒色ワークや透明体でも扱いやすいことが多いのが利点です。

一方で、反射面の角度がついていると音が拡散して戻りにくく、細い棒状物や吸音材などでは検出が不安定になります。また空気中の音速は温度で変わるため、温度変化が大きい環境では距離誤差として現れます。

現場で安定させるコツは、狙う面をできるだけセンサ正面に向けること、検出対象以外の反射物(治具や壁)を避ける配置にすること、必要に応じて温度補償の有無や平均化設定を確認することです。方式の強みを活かすには、設置設計の寄与が大きいセンサーです。

用途別の選び方

同じ非接触センサーでも、目的が「距離を測りたい」のか「ある/ないを確実に見たい」のかで最適方式が変わります。用途の要求を先に明確化するのが近道です。

用途別に考えると、必要なのは“高精度”ではなく“目的に対する十分な再現性”であることが多いです。例えば距離測定は分解能よりも温度ドリフトや設置ばらつきが支配的になる場合があり、有無検出は感度よりも誤検知しにくさが重要になります。

選定前に決めるべきなのは、測りたい量が連続値か、しきい値判定か、そして不良を見逃したくないのか、誤検知停止を避けたいのかという優先順位です。優先順位が決まると、方式の候補が自然に絞れます。

ここでは代表的な用途として、距離・変位測定、有無検出・位置決め、厚み・段差・表面形状の3つで考え方を整理します。

距離・変位測定

距離・変位測定では、必要分解能、測定距離、対象材質の3点から方式を選びます。要求がミクロン級で、対象がしっかり見える条件を作れるならレーザー変位や白色光干渉が有力です。

一方、対象の色や反射率差が大きく、光学条件が安定しない場合は、多少分解能を譲っても超音波を候補に入れる価値があります。測る対象が透明体や黒色で、光学式の受光量が確保しにくい工程ほど検討余地があります。

金属ターゲット限定で環境影響を抑えたい場合は、誘導/渦電流系(近接カテゴリの応用)も現実的です。油・水・粉塵が避けにくい現場では、原理的に強い方式を選ぶ方がトータルの稼働率が上がります。

有無検出・位置決め

有無検出・位置決めでは、繰り返し性と誤検知しにくさが最重要です。距離精度より、狙った条件で確実にON/OFFできるかを評価します。

金属ワークなら誘導近接が定番で、多少の汚れやミストがあっても安定しやすいのが強みです。非金属や内容物の検知が必要なら静電容量が候補ですが、周囲物体や付着物の影響を受けやすいため、取り付け後のしきい値調整と定期清掃の運用設計が前提になります。

光学式は応答が速く小物の位置決めに向きますが、反射率差や周囲光の影響で“たまに取りこぼす”リスクが出やすい方式です。遮光や偏光、反射板方式の採用など、誤検知のモードを先に潰す設計が安定稼働の鍵になります。

厚み・段差・表面形状

厚み・段差・表面形状の測定では、分解能だけでなく測定原理の適合が品質を決めます。単に高分解能でも、反射が成立しない対象では再現性が出ません。

ラインレーザーは断面形状を連続的に取得できるため、幅方向のたわみ、エッジ欠け、盛り上がりなどを“面として”捉えたい用途に強いです。流れ作業でスキャン速度が必要な工程ほど有効です。

白色光干渉は微小段差・薄膜領域で強みがありますが、測定視野や対象の反射特性(鏡面/粗面)に制約が出やすい点に注意が必要です。仕様検討では、欲しい数値だけでなく、測定姿勢、焦点深度、ワークばらつきまで含めて測定が成立するかを確認します。

選定で確認すべき仕様

方式が決まっても、仕様の詰めが甘いと「測れない」「安定しない」につながります。選定時に確認すべきポイントをチェックリスト的に整理します。

センサー選定の実務では、方式選びよりも“仕様の読み違い”がトラブルになりがちです。特にカタログ値は、理想条件や専用ターゲットでの値が含まれるため、そのまま現場に当てはめるとギャップが出ます。

安定稼働に効くのは、測定条件の前提を揃えることです。対象物、距離、平均回数、温度範囲、設置姿勢など、どの条件でその性能が出るのかを合わせて確認します。

ここでは測定性能、対象物条件、設置と環境、インターフェースの4点に分けて、見落としやすいポイントを整理します。

測定範囲・分解能・繰り返し精度

測定範囲は「最小〜最大距離が入っているか」だけでなく、実運用で使う距離がレンジのどこに位置するかが重要です。レンジ端はノイズや非線形の影響が出やすく、余裕を見た中央寄りで使えると安定します。

分解能は最小検出変化ですが、工程で必要なのは多くの場合、繰り返し精度(同条件でのばらつき)です。分解能が細かくても繰り返しが悪いと判定が揺れます。工程能力(許容ばらつき)に対して繰り返し精度が足りるかを先に見ます。

カタログ値は測定条件がセットになっています。対象材質、距離、平均回数、フィルタ設定などが違うと数値が変わるため、条件を合わせて比較し、最終的には実ワークでの評価を前提にすると選定ミスを減らせます。

対象物の材質・色・表面状態

対象物の材質は方式選定を左右します。金属か非金属か、導電性があるか、透過するかしないかで、そもそも検知原理が成立するかが変わります。

光学式は色・反射率・透明度・表面粗さの影響を受けやすく、黒色や透明体、鏡面は難易度が上がります。対策としては、波長の相性、受光量の余裕、反射板方式や角度設定など、光学条件の設計が必要です。

静電容量は誘電率や付着物、誘導は金属種や形状、超音波は反射面の角度・吸音性が効きます。現場の“ばらつき要因”が何かを先に洗い出し、それに強い原理を選ぶと安定度が上がります。

設置距離・取付スペース・環境耐性

設置では検出距離だけでなく、死角、取り付け姿勢、治具干渉、配線取り回しまで含めて成立性を確認します。センサ単体が高性能でも、ワークの動線や清掃性が悪いとすぐ不安定になります。

粉塵・ミスト・切粉・水・薬品・温度・振動・EMIなど、現場環境に対する耐性は必須確認項目です。保護等級、使用温度範囲、耐薬品性などの仕様だけでなく、レンズ面の汚れ対策やケーブルの断線リスクまで見ます。

メンテナンス性も性能の一部です。清掃が難しい位置に設置すると、汚れが原因の誤検知が増えます。現場で“維持できる設計”になっているかを、選定段階で確認するのがプロジェクト全体の手戻りを減らします。

インターフェース・出力形式(アナログ・デジタル)

センサは検知できても、制御盤やPLCに適切に取り込めないと価値が出ません。しきい値のON/OFFで十分ならデジタル出力、連続値で制御や記録をしたいならアナログ出力(電圧/電流)や通信を検討します。

通信(例:IO-Link等)は、設定値の遠隔管理や状態監視、交換時の復元に強みがあります。単なる配線削減ではなく、立ち上げと保全の工数を減らす手段として評価すると効果が出やすいです。

応答時間、サンプリング周期、配線長、ノイズ対策も合わせて確認します。特に高速ラインでは、センサ応答だけでなくPLCの入力フィルタやスキャン周期がボトルネックになることがあるため、システム全体で成立するかを見て選ぶのが安全です。

まとめ

非接触センサは「方式(原理)」「用途要求」「仕様条件」の3点で整理すると選定ミスを減らせます。最後に要点を振り返り、導入前の確認事項を明確にします。

非接触センサは、触れずに測れる便利さの裏側で、原理ごとの得意・不得意がはっきりしています。まずは光学式、近接(誘導・静電容量・磁気)、超音波の特徴を押さえ、現場のばらつき要因に強い方式を選ぶことが重要です。

次に、用途を距離・変位、有無検出・位置決め、厚み・段差・形状に分けて要求を明確化すると、必要な性能が整理できます。高精度よりも、工程で安定する再現性を優先すると導入後のトラブルが減ります。

最後に、測定範囲・分解能・繰り返し精度、対象物条件、設置と環境、出力形式まで仕様を詰めます。カタログ値の前提条件を確認し、可能なら実ワークで評価してから決めることが、非接触センサ選定の最短ルートです。