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繰り返し精度とは?正確度や再現性との違いを解説

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繰り返し精度とは、同じ条件下で複数回の測定を行ったときに得られる結果のばらつきを評価する指標です。同一の測定環境と作業手順を保つことにより、測定データの安定性を把握する手がかりになります。同時に、現場の作業品質や製品の合否判定に影響を与える重要な要素でもあります。

本記事では、正確度や再現性と比較しながら、繰り返し精度の意義とその向上策について解説していきます。繰り返し精度は、測定結果や製造プロセスのブレを抑え、高品質を維持するために欠かせない考え方と言えます。正確度との違いを理解することで、不必要なコストや時間ロスを防ぎながら、効率の良い工程管理につなげることができます。

さらに、計測・検査方法の具体的な評価手順や半導体分野での活用事例など、専門的な観点からも解説を行います。繰り返し精度をきちんと把握することで、製造工程の歩留まり改善や、研究開発段階でのデータの信頼性向上など、多くのメリットを得ることが可能になります。ぜひ最後までお読みいただき、実践に生かしてください。

繰り返し精度が求められる主な場面

組立加工や検査工程など、一度きりの測定や作業ではなく、同じ作業を何度も行う現場において繰り返し精度が重要視されます。

例えば金属加工では、同一寸法を大量に生産するケースが多々あります。その際に繰り返し精度が低いと、出来上がった製品の寸法が大きくばらつき、不良品率が増加する恐れがあります。繰り返し精度が高い計測や作業工程を確立すれば、公差範囲内で品質を安定させやすく、生産コストの低減にも結びつきます。

また検査工程では、一度だけ測定した結果を鵜呑みにして判断すると、大きなリスクを伴うことがあります。繰り返し精度を意識して複数回測定を行うことで、偶然的な誤差や測定機器の異常を早期に発見できます。小さな数値変化に対しても敏感に反応できるため、最終的な品質保証につながります。

医療機器や研究開発といった分野でも、繰り返し精度の高い測定結果は信頼性の源となります。仮に一度の測定結果が誤差を伴っていた場合でも、複数回の測定で得られるデータのばらつきを管理することで、問題点を洗い出しやすくなります。結果として、正しい判断やトラブル回避を行いやすくなるのです。

再現性との関係:繰り返し精度との違いと使い分け

再現性は条件を変えた場合でも得られる測定結果の一貫性を表し、同一条件下での繰り返し精度と混同されがちです。

繰り返し精度は、同じ装置・同じ環境・同じ計測条件で複数回行ったときの結果のばらつきを指します。これに対し、再現性は装置や環境、あるいはオペレーターが異なる場合でも、同様の主張が得られるかどうかが焦点となります。どちらも製品の品質や測定の信頼度を左右するため、使い分けを意識することが大切です。

再現性の評価軸は少し広範であり、異なる製造ラインや異なる地域でも安定した結果を得られるかを確認します。研究機関や複数工場を持つ企業では、装置や条件がわずかに異なるだけで結果が変わる場合があります。この点を踏まえたうえで、繰り返し精度と再現性を組み合わせて管理することが理想的です。

実際の現場では、まずは繰り返し精度を高めることで基本的な測定の安定性を確保し、それから再現性に視点を広げることが多いです。短期間での測定バラツキを抑えられなければ、測定条件が変化したときのズレも大きくなりがちです。繰り返し精度と再現性の双方に配慮することで、より高い製造品質や研究精度を実現できます。

正確度(Accuracy)と精度(Precision)の基本

正確度は真の値との近さ、精度は測定結果のばらつきの大きさを示しますが、混同されることも多いため注意が必要です。

正確度が高いとは、測定された値が理想的な真値にどれだけ近いかを意味します。一方で精度が高いというのは、測定値同士がどれだけ集中的にまとまっているか、ばらつきが小さいかを表します。両方を同時に満たさなければ、測定結果の信頼度はどうしても下がってしまいます。

例えば、真の値から外れていても各回の測定結果がほとんど同じであれば、精度が高いが正確度が低い状態になります。逆に、測定結果の中心点は真値に近いものの、ばらつきが大きい場合は正確度が高くても精度は低いということになります。製造や研究では、この二つを誤って捉えると不良品の発生やデータ分類の誤りにつながる恐れがあるため注意が必要です。

実際の品質管理では、正確度と精度がそれぞれどの程度求められるのかを明確にし、計測機器の選定や保守を行います。高価な計測機器を導入しても、校正や管理を怠れば正確度も精度も下がります。両者を意識しながら継続的に計測・検査の質を保つ仕組みが求められます。

計測・検査における繰り返し精度の評価方法

測定結果の安定度を定量的に把握するためには、繰り返し精度の評価方法を理解し、定期的に実施することが大切です。

繰り返し精度を評価する基礎的な手順としては、同じサンプルや同一条件で複数回の測定を行い、その平均値と標準偏差を算出する方法が用いられます。標準偏差が小さいほどばらつきが少なく、繰り返し精度が高いと判断できます。統計的な手法を活用することで、客観的に測定器やプロセスの安定度を把握できます。

より高度な方法としては、ゲージR&R(Gauge Repeatability and Reproducibility)などの実験計画法を活用する方法もあります。これは、測定システム全体の繰り返し精度に加え、オペレーターや装置の違いによる再現性の度合いも評価できるため、一括して測定プロセスを管理できるのが利点です。

評価結果は、定期的に記録して比較することで、装置の劣化や環境変化、作業方法の乱れなどを早期に察知できます。特に大量生産の現場や微細加工を扱う分野では、ほんのわずかな変化が大きな品質問題につながるケースもあります。繰り返し精度の管理は、日々の品質保証の基盤となります。

代表的な計測装置・検査装置と繰り返し精度

代表的な計測装置としては、三次元測定機やレーザ測長機、画像検査装置などが挙げられます。これらの装置では、高い分解能と繰り返し精度を両立することが求められます。特に多軸で測定を行う装置の場合は、各軸ごとの誤差や積算誤差の評価が重要です。

最先端の画像検査装置では、ピクセル単位のズレが検査結果に大きく影響を与えます。このため、装置メーカーが示す繰り返し精度の値だけでなく、実際の稼働環境で装置をテストし、その結果を元に管理手法を調整することが肝要です。ソフトウェアのバージョンやレンズの状態によっても変動が起こります。

さらに、組み立て工程で使われるマニピュレーターや工作機械でも、アライメントや消耗部品の状態が繰り返し精度に影響します。機械自体の剛性や制御システムの応答性、定期的なメンテナンスが安定性を左右する要素となります。装置を導入する際には、測定範囲や予想される使用頻度を踏まえた選定が必要です。

繰り返し精度に影響を与える要因:環境要素・装置性能

環境要素としては、温度や湿度、振動などが挙げられます。温度がわずかでも変化すると、装置や測定対象物の寸法が変わり、結果的にばらつきが大きくなることがあります。精密測定の場合は、空調設備や防振対策を徹底することが繰り返し精度維持の鍵となります。

装置性能では、モーターやセンサー、光学系などの経年劣化が影響するケースがあります。これらの部品が徐々に劣化すると、制御精度が低下したりノイズが増えたりして、測定値のばらつきが広がります。定期的な部品交換やキャリブレーションを行い、装置の性能を安定的に保つ必要があります。

さらに、オペレーターの操作熟練度や手順の標準化も重要です。同じ装置を使っていても、操作が統一されなければ結果にバラツキが生じやすくなります。繰り返し精度の向上には、装置だけでなく、作業プロセス全体を見直して、標準化された手順を徹底することが不可欠です。

半導体分野での繰り返し精度の重要性

微細寸法が求められる半導体の製造・検査工程での繰り返し精度は、製品の合否や歩留まりを左右する重要な要素です。

半導体の回路パターンはナノメートル単位の精度が求められるため、ほんのわずかな寸法誤差でも大きな機能不良を引き起こす場合があります。繰り返し精度が確保されないと、製造ラインで歩留まりが悪化し、コスト増や納期遅れにつながります。高度な品質管理が必要な理由の一つは、こうしたミクロな誤差の蓄積が生産効率を大きく左右する点にあります。

また半導体業界では、プロセスの段階ごとに多数の測定工程が組み込まれています。例えばフォトリソグラフィ工程やエッチング工程の後に、寸法検査や外観検査を繰り返し実施します。繰り返し精度が高い検査設備を導入すれば、より正確な不良検出と良品判定が可能となり、最終製品の信頼性も高まります。

一方で、検査機器やプロセスごとのばらつきを最小化するためには、環境要因の管理や作業手順の標準化が欠かせません。半導体特有のクリーンルーム環境では、塵や温湿度の微妙な変化にも気を配りつつ、各種装置を適切に保守することが大切です。安定的に高品質な製品を作り続けるために、繰り返し精度を常に意識した環境管理が求められています。

エッチング装置・電子顕微鏡における繰り返し精度の活用

エッチング装置では、特定の材料を選択的に削り取ることで微細パターンを形成します。この工程において、一回一回の処理条件が微妙に変動すると、エッチング速度や形状の均一性に影響が生じます。繰り返し精度が高い装置であれば、同じ処理条件を再現しやすく、狙った形状を安定的に得られるメリットがあります。

電子顕微鏡は高倍率での観察を行う機器で、半導体の微細構造を確認する際に不可欠です。繰り返し精度が低いと、観察対象の焦点や倍率設定が少しずつずれてしまい、正確なデータが得られなくなる可能性があります。これは歩留まり判断に大きく影響するため、定期的な較正とメンテナンスを徹底することが重要です。

実際の半導体ラインでは、複数の装置を組み合わせて生産を行うため、個々の装置の繰り返し精度だけでなく、装置間のデータ整合性も管理する必要があります。エッチング装置と検査装置の結果を突き合わせ、微小な誤差を早期に発見する仕組みを作ることで、トラブルシューティングが迅速になります。結果として、高品質なデバイスを大量かつ安定的に生産できるようになります。

繰り返し精度を高めるための具体的なポイント

定期的な校正や環境条件の管理、作業手順の標準化など、繰り返し精度を安定化させるための方法を紹介します。

第一に、測定機器の定期的な校正は必須です。高精度な装置を導入しても、そうした機器を適切に保守しなければ、装置の能力を十分に発揮できません。定期的な校正が行われることで、測定値の正確度や繰り返し精度が維持され、一貫した品質管理が可能になります。

次に、作業環境の安定化を図ることも重要です。温度や湿度、振動などの環境要因は、繰り返し精度に大きな影響を及ぼします。空調設備による温度管理や床の防振対策、クリーンルームの導入など、環境要因を徹底的に制御することで、装置本来の測定精度を引き出すことができます。

最後に、作業手順の標準化と作業者の教育も欠かせません。誰がどのように測定を行っても同じ結果が得られるように、マニュアルや手順書を細かく整備する必要があります。また、定期的な研修を実施し、作業者の操作スキルを高めることで、人為的なばらつきの抑制につなげることができます。

まとめ:繰り返し精度を正しく理解し、成果につなげる

正確度や再現性との違いを把握しつつ、繰り返し精度の向上策を実践することで、より高品質な製造・研究体制を構築できます。
繰り返し精度は、同一条件下での測定結果や作業内容にどれだけ安定性があるかを示す重要な指標です。正確度や再現性と併せて管理しなければ、製品の品質や研究データの信頼性に大きな影響を及ぼします。これらの概念を区別しながら対策を講じることで、無駄なコストや手戻りを減らすことが可能になります。
具体的には、装置や環境要因、作業手順など、繰り返し精度を左右するさまざまな要素を理解し、それぞれに対して継続的な改善を行うことが大事です。特に、装置の定期点検や校正は、ブレの少ない結果を得るための基盤となります。また、人的要素に関しても標準化や教育を進めることで、測定データに対する信頼度をさらに高められます。
半導体業界をはじめ、ミクロな精度が求められる分野では、繰り返し精度の確保が歩留まりや製品の合否に直結します。一方で、大量生産工程や研究・開発のシーンでも、その重要性は決して小さくありません。さまざまなアプローチで繰り返し精度を高めながら、品質と効率を両立した体制を築いていくことが、今後ますます求められていくでしょう。

こうした高い繰り返し精度が求められる現場において、カツラ・オプト・システムズでは、精密な光学・機構設計と安定性を重視した製品・ソリューションを通じて、製造・検査・研究工程を支援しています。繰り返し精度を軸とした装置選定や工程改善をご検討の際には、ぜひカツラオプトの製品をご活用ください。