LiDARとToFセンサーを徹底比較!違い・原理・活用事例を総ざらい
近年、3Dセンシング技術の急速な発展に伴い、LiDARやToFセンサーは幅広い分野で注目を集めています。3次元情報を高精度で取得できることから、自動運転やスマートフォンをはじめとしたさまざまな分野での活用が進んでいます。
両者の特徴は似ている部分もありますが、用途や性能、コスト面で大きな違いがあるため、目的に応じた最適な選択が重要です。本コラムでは、両センサーの仕組みや導入事例、運用上のポイントなどを多角的に解説します。
LiDARとToFを正しく理解しておくことで、効果的なセンサー運用が期待できます。それぞれの測定方式やユースケースをしっかり把握し、自分の目的に合った技術を選びましょう。
LiDARとToFとは?基本的な仕組みと特徴
まずはLiDARとToFセンサー、それぞれの構造や基本的な動作原理を解説します。
LiDARとはレーザー光を対象物に照射し、その反射時間を計測して対象までの距離や形状を推定する技術です。レーザーパルスの走行時間を捉えて3D情報を取得する仕組みとなっており、高い精度と広い測定範囲を両立できる点が大きな特徴です。また、自動運転などでは周囲を高精度にスキャンし、障害物の位置や動きまでも把握する用途で活躍しています。
一方、ToFセンサーは飛行時間方式(Time of Flight)の原理を利用し、光を発してから返ってくるまでの時間差から距離を求める仕組みです。一般的に測定距離が短めで、スマートフォンの顔認証や短距離計測が必要な分野で多用されています。小型化しやすくコストも比較的抑えられるため、身近なデバイスへの搭載に向いている点が魅力です。
LiDARの構造と測定原理
LiDARは基本的にレーザー光源、スキャナ、受光部、そして信号処理ユニットで構成されています。レーザー光源から飛ばされたパルス状の光をスキャナで空間に照射し、対象物に反射した光を受光部が検知し、信号処理ユニットで飛行時間を計算して距離情報を取得します。複数のポイントを連続スキャンすれば、3D点群データとして周囲の高精細な地図が生成できる仕組みです。
ToFセンサーの構造と測定原理
ToFセンサーは照射源(赤外光など)とイメージセンサー、信号処理回路を組み合わせた構造が一般的です。光の反射時間をピクセル単位で直接測定することで、複数の点の距離を同時に取得できます。特に近距離での導入がしやすく、顔認証やジェスチャー認識といった用途でも活発に利用されていますが、強い太陽光環境など外乱が大きい場所では計測誤差が大きくなる点に注意が必要です。
LiDARとToFセンサーの明確な違いとは?
測定原理は類似していますが、対応範囲やコストなど各種面で違いがあります。
両者は光の飛行時間を基に距離を求めるという点で共通しますが、計測範囲や精度、導入コストなどに大きな差があります。LiDARは数百メートル以上の距離を高精度に測定できるものも存在し、広範囲のマッピングや自動車の周囲検知など大規模な用途で利用されやすいのが特徴です。一方のToFセンサーは近距離測定に適した設計になりやすく、車内での乗員検知やスマートフォンの顔認証などに多用されます。
測定距離・精度の違い
LiDARは長距離でも安定した精度を保てるため、自動運転のように遠くまでしっかりと環境を把握する必要のある場面に最適です。反面、ToFセンサーは数メートル程度の範囲において高い有効性を発揮し、精密さよりはスピードや小型性を重視したアプリケーションに向いています。計測精度自体は双方とも高いのですが、対象とする距離範囲によって性能差が顕著に表れます。
コストと複雑さの違い
LiDARは高精度と長距離測定を実現するため、レーザー光源や機械式スキャナ、複雑な制御システムを要するものが多く、現状ではコストが高い場合が少なくありません。これに対してToFセンサーは構造がシンプルで量産もしやすく、小型化や廉価化が行いやすい点が強みです。プロトタイプ開発などでは手短に導入しやすい一方、高度な精度が必要な応用にはLiDARの方が適切なケースもあります。
ユースケースの違い
LiDARは自動運転や災害調査、建築分野など、大規模な空間の3Dマッピングが必要な場面で広く利用されています。特に高速道路など広い範囲を瞬時にスキャンする必要があるシステムに適しており、動いている対象物の位置や速度を正確に捉えることも可能です。一方、ToFセンサーはスマートフォンの顔認証や室内の物体検知、車内でのジェスチャー認識など、近距離かつ機器内部での利用がメインで、手軽に導入できる傾向があります。
LiDARの測定方式~ToF方式とFMCW方式の基礎
LiDARには、ToF方式とFMCW方式の大きく2つの測定方式があります。それぞれの仕組みと特徴を知ることが大切です。
従来のLiDARはパルス状の光を照射して戻り時間を計測するパルスToF方式が一般的です。構造が比較的単純で小型化しやすい一方、強い外光に影響を受けやすい場合があるため、高輝度のレーザーや適切なフィルタリング技術が重要となります。また、FMCW方式は周波数変調を用いて小さな反射信号も精密に捉えられるのがメリットですが、比較的高い技術ハードルやコスト面が課題です。
LiDARとToFセンサーの主な活用事例
両者は幅広い分野で用いられており、用途に応じて使い分けられています。
大規模な3Dマッピングを必要とする場合にはLiDARが選ばれ、近距離のシンプルな検出機能が求められる場合にはToFセンサーが活躍するといった具合に、明確な住み分けが存在します。両者の特徴を理解して使い分けることで、システムの無駄を減らし、的確なデータ収集が可能となります。
自動運転・ADASでの活用
自動運転や先進運転支援システム(ADAS)では、特にLiDARを用いた周囲環境の高精度マッピングが欠かせません。高速走行中にも遠距離かつ広範囲のデータを取得できるため、歩行者や障害物を正確に把握できる点が大きな強みとなっています。ただし、車内の乗員認証やジェスチャーコントロールには近距離計測が得意なToFセンサーが採用されるケースも増えてきました。
ロボティクス・産業用機器での活用
産業用ロボットや物流ロボットなどでは、LiDARを使った周囲認識や地図作成による自律走行が一般的です。大きな工場での自動搬送や倉庫内での棚搬送といった用途では、正確な位置情報を得るためにLiDARの性能が活かされます。一方、小型の室内ロボットや深い精度を必要としない対象の認識には、簡易的なToFセンサーを組み込むことが多いです。
スマートフォンやAR/VR分野への応用
スマートフォンの顔認証やARアプリでの正確な奥行き把握など、近年のモバイルデバイスにはToFセンサーが搭載される事例が増えています。軽量かつ省電力でありながら、必要十分な距離計測性能を発揮するため、ユーザーエクスペリエンスの向上に大きく寄与しています。AR/VR分野でも深度情報をリアルタイムに反映させやすいため、より自然な拡張現実の表現を目指す上で欠かせない要素となりつつあります。
Radar・Sonarとの比較~他のセンサーとの住み分けは?
電波を使うRadarや超音波を使うSonarなど、多種多様な距離計測技術があります。それぞれ得意とする分野を押さえておきましょう。
Radarは電波を利用して遠距離の対象を検知する技術で、悪天候にも比較的強く高速移動する物体を捉えやすい利点があります。また、Sonarは水中での物体検知や深度測定に向いており、水を媒介とした超音波の伝搬を利用して距離や内部構造の推定を行うのが特徴です。LiDARやToFは光を媒介とした距離計測であり、高精細な3D情報を得ることに長けている一方、状況や用途によってはRadarやSonarを組み合わせるほうが適切なケースもあり、センサー選定時には総合的な視点で判断することが重要です。
導入・運用時に押さえておきたい注意点
実際にシステムへ導入する際には、適切な環境整備や設計上の注意が必要です。
センサーの設計段階では、設置場所や干渉要因の検討が欠かせません。とりわけ外光や反射率の高い物体、あるいは電波干渉など、想定外の誤差をもたらす要因を考慮しておくことで、測定精度の向上が図れます。また、必要な測定範囲や精度が明確になっていないと、オーバースペックやコスト超過につながる恐れがあるため、要件定義段階からセンサーの特性をしっかり把握することが大切です。
センサー導入においては規格や安全面の確認も必要で、レーザー出力や電波出力、使用地域での法的制限などを事前に調べておく必要があります。特にパワフルなレーザーを扱うLiDARは、目の安全基準やクラス分けに留意しなければなりません。さらに、保守体制やソフトウェアアップデートの継続性など運用コストも加味して、長期的な視点で導入計画を立てることが望ましいです。
測定環境への配慮
光や電波の干渉源は測定結果を狂わせる可能性があるため、屋外なら天候や太陽光の強さ、屋内なら照明やその他の発光源の影響に注意が必要です。反射率の低い材質やツヤのある物体は誤差を増大させることもあるため、事前試験での測定誤差の把握が重要です。特にLiDARはレーザーを使用することから姿勢や角度によって反射特性が変化しやすく、設置レイアウトにも工夫が必要になります。
目的や用途に応じた最適選定
遠距離かつ高精度な3Dマッピングが必要ならLiDAR、小型化とコスト重視で近距離計測ならToFセンサー、屋内外問わず長距離計測をシンプルに実現したいならRadarなど、用途や性能・価格バランスを複合的に考慮することが大事です。目的が明確でなく汎用的な設計を目指すと、余分な機能を搭載して高コストになりがちなので要注意です。どの技術を選ぶかによって必要となる電源やハード設計も変化するため、プロジェクト開始時点からセンサー特性を組み込んだ計画を行いましょう。
法規制・安全面の考慮
レーザーを放出するLiDARは、クラス分けによって人体や目への影響が問題になる場合があります。海外で使用する際には該当地域の規格や免許制度もチェックし、エンクロージャの設計や故障時の安全策などを整備する必要があります。電波を扱うRadarについても周波数帯の規制を事前に確認し、安全面と法令順守を両立させる設計が求められます。
LiDARとToFセンサーについてよくある質問
導入時などにユーザーが抱く疑問点とそれへの回答をあらかじめ把握しておくと安心です。
新たにLiDARやToFセンサーを導入する際には、技術的・コスト的な不安や、天候条件での性能差など、多くの疑問が生じます。導入前の段階でよくある質問に目を通し、ポイントを押さえることで、トラブルを未然に防ぐとともに、効率的にプロジェクトを進めることができます。
ToFカメラの欠点とは?
ToFカメラは照射光と背景光を区別して距離を計測しますが、強い太陽光など外乱が激しい環境では誤差が生じやすい点が挙げられます。また、光の飛行時間を厳密に比較するため、特定の距離範囲を超えると精度が低下する仕組みです。ただし、屋内や夜間など環境がコントロールしやすい場面では、その使いやすさと小型化の容易さが大きい利点になります。
LiDARとレーザースキャナの違いは?
レーザースキャナは主に2次元的な平面上での掃引測定が中心で、工場などでの安全柵や位置検出に活用されるケースが多いです。一方、LiDARは上下方向を含めた3次元点群を高速で取得できるため、自動運転や広範囲マッピングなど、より高度な空間認識が必要な場面に適しています。近年ではレーザースキャナ技術が進化し、3Dレーザースキャナも登場していますが、総合的な3Dデータ生成の効率や精度の面で、LiDARとは用途が異なると考えると理解しやすいでしょう。
まとめ・総括
最後に、LiDARとToFセンサーの特性や導入に際して把握すべきポイントを整理しておきます。
LiDARは遠距離の高精度スキャンに強く、自動運転や大規模な空間計測の場面で圧倒的な性能を発揮する一方、設備費や設計コストが高いことが課題となります。ToFセンサーは短距離計測を素早く行い、小型機器に実装しやすいという利点があるため、スマートフォンの顔認証や室内ロボットなどで幅広く利用されてきています。実際に導入を検討する際は、使用環境や距離、必要精度、コストなど複数の要件を整理し、それぞれの技術が持つメリットとデメリットを正しく見極めることが成功へのカギとなるでしょう。