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レーザー溶着機・加工機の光軸調整:基本とポイント

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レーザー溶着機や加工機の性能を最大限に引き出すためには、正確な光軸調整が重要です。光軸がズレた状態ではレーザーの出力が十分に伝わらず、加工品質や生産性に大きな影響を及ぼす可能性があります。

本記事では、光軸調整が必要となる理由や注意点、使用する光学部品の概要をはじめ、測定機器やセンサーを活用した精度向上の方法について解説します。

初心者の方にも分かりやすいように、要点をかみ砕いて紹介しますので、レーザー溶着機や加工機の導入・運用にお役立てください。

光軸調整が必要となる理由

レーザー加工において光軸調整は、加工品質や生産効率を左右する非常に重要な工程です。

レーザー搭載の溶着機や加工機では、レーザー光をビームとして制御し、溶着や切断といった多様な用途に用いるため、ビームが安定しなければ正確な加工ができません。光軸のわずかなズレだけでも、溶着部の強度不足や切断面の荒れなど、品質面でのトラブルを引き起こす原因となります。

正確な光軸調整を行わないまま長期間使用すると、加工不良だけでなく、過剰なエネルギー消費によりレーザーの寿命を縮める恐れもあります。輸送や振動によって光軸がズレるケースもあるため、定期的に確認し、必要に応じて再調整することが推奨されています。

レーザー溶着機・加工機における光学部品と構成

レーザーのビーム品質を保つためには、使用される光学部品やその配置について基本的な理解が欠かせません。

レーザー溶着機や加工機には、レーザー発振部から出力されたレーザー光を制御するために複数のミラーやレンズが搭載されています。これらの部品は、ビームを反射・集光させる要であり、一つでも位置や角度がズレると大きな誤差を生じます。そのため、各パーツを適切に配置し、継続的に調整することで安定したビーム品質を確保する必要があります。

特にレーザー光の経路を確認しやすいよう、ビームの経路や光学部品の配置を可視化する取り組みを行うと、ズレの発生箇所を迅速に特定し調整が行いやすくなります。近年はシミュレーションソフトなどで事前に光学設計を最適化する手法もあり、導入時のトラブルを大きく減らせます。

ビーム品質とビームプロファイルの重要性

レーザー光の形状や強度分布を示すビームプロファイルは、加工結果を左右する大きな要因です。ビームが均一であるほど加工ムラを抑制し、切断面が滑らかな仕上がりになります。逆に、ビームプロファイルが乱れていると局所的に熱集中が起こり、溶着部にヒビや割れが生じやすくなります。

ビーム品質の評価には、専用のビーム観察装置やカメラシステムを用いるのが一般的です。これらを活用することで、調整箇所や改善の必要性を具体的に把握し、不要なトライ&エラーを削減できます。

集光レンズ・ミラーの配置と調整手順

集光レンズやミラーを適切に配置することは、レーザー光を的確に加工物へ届けるうえで欠かせません。まずはレーザー発振部からの光軸と各ミラーの角度を確認し、段階的に集光レンズへとビームを安定的に導く工程が基本です。初期段階で大きなズレを発見した場合は、一つ前の工程に立ち戻り、再度微調整を行います。

調整作業は繰り返しが多いため、安定した状態を保ちやすいツールや治具の活用が有用です。例えば簡易的なレーザー光可視化ツールやチルトセンサを組み合わせることで、気づきにくいわずかな角度ズレも検出しやすくなります。

ファイバーレーザーの特徴と光軸調整のポイント

ファイバーレーザーは強度やメンテナンス性に優れる一方、光軸調整には従来型レーザーとは異なる視点が必要になります。

ファイバーレーザーは光ファイバーを媒介として高密度なレーザー光を取り出すため、空間経路のミラーよりもファイバー内でのビーム伝送品質が重要になります。このため、ファイバー接続部の位置や角度、ケーブルの取り回しなど、微細な変化でもビームプロファイルに影響が及ぶ点に注意が必要です。

また、ファイバーレーザーは熱的な負荷にも強いとされますが、過度の熱が蓄積すれば物理的な歪みや接合部の劣化を引き起こす可能性があります。定期的な点検やウォーミングアッププロセスを確保し、安定した環境で光軸を維持することが大切です。

光軸調整に役立つ測定機器・センサーの種類

精度を高めた光軸調整を行うためには、各種測定機器やセンサーの正しい活用が欠かせません。

レーザー変位計やチルトセンサなどの測定器を用いることで、レーザー光軸の角度やビームの強度分布を数値化・可視化できます。これにより、調整結果の検証を素早く行い、再現性の高い作業手順を確立しやすくなります。

さらに最近では小型化や一体型センサが普及し、装置への取り付けが容易になっています。こういった機器を組み合わせることで、外部環境の振動や温度変化に対しても高い信頼性を保ちつつ、光軸調整が行いやすくなりました。

レーザー変位計の特長・用途・外形寸法

レーザー変位計は、対象物との距離や位置変化を高精度で測定できる機器です。近年は数ミクロン単位の精度を実現するモデルも多く、光軸調整の微細なずれをリアルタイムに検知できます。

装置に組み込む際は、変位計の外形寸法だけでなく、ケーブルや電源ユニットの配置にも注意を払う必要があります。また測定範囲や測定速度、環境耐性など、運用条件に適した仕様を選ぶことが重要です。

超小型チルトセンサ・一体型チルトセンサ(広角Type)の活用

チルトセンサは、装置内部のわずかな傾きや角度の変化を拾う計測器で、光軸調整において非常に有効です。超小型タイプは狭いスペースに取り付けやすく、メンテナンス性にも優れています。

また一体型の広角タイプは、広範囲の傾きや振動を一度に把握できるので、装置全体における光軸のズレを素早く解析するのに役立ちます。複数のセンサを組み合わせることで、加工機のタクトタイムを短縮しつつ、高い再現性と安定稼働を両立させることができます。

レーザ i-Centerで実現する切れ味向上の仕組み

精密な光軸制御を行うためのシステムとして注目されているのが、レーザ i-Centerです。

レーザ i-Centerは、一連のレーザー加工制御を統合的に管理し、高度なビーム制御やモニタリングを実現するプラットフォームです。光軸に関するデータをリアルタイムで取得・分析し、加工品質を維持するための自動補正を行う仕組みが備わっています。

これにより、オペレーターがしばしば苦戦していた微調整作業を大幅に軽減し、切断面や溶着品質を安定させることができます。複数の加工条件を瞬時に切り替えたい現場でも、パラメータ管理を集中化することで手戻りを減らし、高い生産性を保ち続けることが可能になります。

まとめ・総括

レーザー溶着機・加工機における光軸調整の基本を振り返り、人為的ミスを減らしながら最適な品質を維持するポイントを整理しましょう。

まず、光軸のズレは加工不良やレーザー寿命の低下に直結するため、定期的な検証と早めの調整が不可欠です。ビーム品質を左右する光学部品の取り扱いは、メーカー推奨の手順に従いながら、実験データと照合しつつ正確に行いましょう。

さらに、レーザー変位計やチルトセンサなどの測定機器を適切に用いることで、再現性の高い調整が可能になります。これらのツールを上手に組み合わせれば、一段と安定した光軸を得られ、生産性の向上と品質の確保に大きく貢献します。