半導体製造における光学センサと非接触精密測定の基礎
半導体製造では超微細なパターン形成と高い量産性を両立させる必要があり、その実現のためには精密測定技術が欠かせません。中でも、光学センサを活用した非接触式の測定手法は、ウェーハを傷めずに正確な情報を得る上で大きなメリットがあります。
ウェーハアライメントや形状検査など、多様な工程で高精度な把握が求められるため、測定誤差や搬送時のリスクをいかに低減するかが重要です。限られた時間でより多くの製品を安定的に供給する上でも、非接触測定の利点は大きいと言えます。
本記事では、光学センサによる非接触測定技術の基礎から最新の応用例までを整理し、現場での活用方法や品質向上のポイントについて考察します。今後の半導体製造を支える重要な要素として、ぜひ導入や運用の参考にしてください。
半導体製造装置・アプリケーションの概要
半導体製造は複数の装置と工程が連携し、極微細レベルでの精密加工と測定を行っています。
製造プロセスには、洗浄、フォトリソグラフィ、エッチング、成膜などさまざまな工程が含まれ、それぞれが高度に自動化されています。しかし高精度を維持するには、わずかな位置ずれや表面異常も見逃さない測定システムが必要です。特に、ウェーハ上の微細パターンを正確に形成するためには、光学センサをはじめとする非接触の精密測定が有効な手段となります。
半導体製造装置は、精度向上だけでなくスループットの改善も常に求められています。先端の計測システムを組み込むことで、人の手を介さずに短時間でウェーハの位置や形状を正確に把握できるようになりました。これにより、余計なダウンタイムを減らしながら歩留まりを高め、最終的には製品の品質と生産性向上に貢献しています。
半導体製造プロセスと計測技術
露光工程では投影レンズを用いて微細パターンをウェーハへ転写しますが、その際の微小な焦点ずれは歩留まりに大きな影響を与えます。そこで、焦点合わせやパターンの重ね合わせを正確に把握するために、光学センサによる非接触測定技術が不可欠です。各工程で利用されるセンサは、静電容量式や共焦点式などさまざまで、対象物や必要精度に応じて選択されます。
特にリソグラフィ以降の微細加工工程では、欠陥検査やパターン形状の把握といった高度な検証が必要です。レーザーオートコリメーター(チルトセンサ)などの反射原理をつかったものや干渉を利用した測定手法は、ウェーハ表面の微小な欠陥や高さ差を可視化しやすく、精密測定に適しています。こうした技術の進歩が、半導体製造全体の安定性と信頼性を支えています。
ウェーハ取り扱いの自動化と課題
自動ロボット搬送技術の発展により、ウェーハを人間が直接触れる機会は激減し、生産性やクリーン度の向上が実現しました。とはいえ、取り扱いが自動化されたからといって割れや歪みが完全に防げるわけではなく、特に高速搬送時に微小な衝撃が蓄積される可能性があります。非接触測定を活用すれば、ライン上でリアルタイムにウェーハの状態を監視でき、不具合の早期発見や迅速な予防保全に役立ちます。
ウェーハ形状測定ソリューション
ウェーハの平坦度や湾曲の度合いはデバイスの歩留まりに直結するため、高精度な形状測定は不可欠です。
平坦度やたわみの僅かな出現でも、次工程でのパターン印刷や露光精度に影響を及ぼすことがあります。これらをいち早く捉えるには、反射(チルトセンサ)や干渉を原理とした光学的アプローチが活躍します。小さな凹凸でも正確に数値化することで、不良発生の原因を未然に特定し、対策を打つことが可能になります。
近年では、大口径ウェーハの適用も進んでおり、その大型化に伴って高精度だけでなく広範囲を一括で測定できるツールが求められています。干渉計や反射光を利用したシステムは、複数点を同時に取得できる仕組みを備えたものも増えており、よりスピーディーかつ詳細な面検査が実現しています。
ウェーハ平坦度・たわみの評価
ウェーハの平坦度評価には、レーザー反射を活用した方法や干渉計を用いた方法が広く使われています。干渉計測では、干渉縞の変化から高さ差をピコメートルオーダーで把握することも可能です。こうした高精度測定により、基板のわずかな曲がりや反りを早期に検出し、生産ラインでの不具合発生を減らします。
3次元形状検出と白色干渉計の活用
白色干渉計による3次元形状検出は、ウェーハ全体のトポグラフィ測定を高速かつ高解像度で取得できるため、歩留まり改善に有効な手段です。白色光を利用することでコントラストが明確に得られ、基板やパターンの複雑な凹凸もしっかりと評価できます。さまざまな材料や形状への適用例が増えており、半導体製造プロセス以外の精密加工分野でも活かされ始めています。
リソグラフィ工程におけるウェーハアライメント
光リソグラフィ工程での位置合わせ精度が半導体の性能や歩留まりを左右します。
リソグラフィはウェーハ上に回路パターンを転写する重要な工程であり、露光前に行うウェーハアライメントの正確さが最終的なチップの品質を大きく左右します。非接触式の光学センサによるアライメントは、物理的接触がないためウェーハにダメージを与えにくく、パターン歪みのリスクも軽減できます。
最近では、一括でウェーハのアライメントを高速に測定可能な専用装置も登場しています。例えば、複数のアライメントマークを同時に光学センサが読み取り、マスクとの位置ずれを細かく補正するアプローチが実用化されています。
ビームアパーチャーと精密ポジショントラッキング
露光プロセスでは、投影光のビームアパーチャを適切にコントロールすることで、微細パターンの精度を保持します。ウェーハアライメント時には、ビームによって照射される領域とマークとの位置関係を正確に測定し、リアルタイムで補正を行う仕組みが重要です。光学センサのサブミクロン以下の追跡精度が、このプロセス全体を支える要となっています。
マスクポジショニングと非接触測定技術
ウェーハ上に転写するマスク自体の位置や傾きの管理も欠かせません。非接触式のレーザー干渉計やレーザーオートコリメーター(チルトセンサ)、共焦点センサなどは、わずかなマスクの変位や回転をナノメートル単位で検出可能です。接触式の測定技術では難しいリアルタイム補正が行えるため、微小なずれがリソグラフィ精度に及ぼす影響を最小化します。
透明レイヤーや接着剤ビードの測定
半導体製造では、ウェーハ上に複数の透明レイヤーや接着剤が積層される場面も多く、お互いの層厚や均一性の評価が難題となります。光学センサによる干渉・反射特性の検出は、複数層の境界面を正確にとらえるのに有効です。これにより、工程の最適化や不良発生の原因究明が迅速化し、高品質デバイスの量産が可能となります。
光学センサによる精密測定の実例
非接触計測の具体的な応用事例を通して、その優位性と運用上のポイントを明らかにします。
光学センサは、シリコンウェーハの厚さ測定や表面欠陥の検出など、目視では難しい部分を正確にとらえるのが特長です。反射や干渉計測を使えば、微小な凹凸の分布を早期に把握でき、工程ごとの品質管理や歩留まり改善に大きく貢献します。従来の接触式計測とは異なり、非接触であるため破損リスクが激減し、生産ラインの安定化にも役立ちます。
また、レーザーや共焦点クロマティック方式など、高周波数帯での計測も可能なシステムはリアルタイムでのオンライン検査にも適しています。大型ウェーハに対する測定や複数点の同時測定など、作業効率を高める取り組みも進められており、半導体製造の高度化に直結しています。
シリコンウェーハ厚さ・形状の高精度評価
シリコンウェーハの厚さは、静電容量センサや光学式変位センサを用いてナノメートル精度で評価できます。表面形状の測定には、表面の反射を利用するデフレクトメトリ(反射式表面検査)システムが有効で、光の反射パターンの歪みから幾何学的な偏差を検出します。これにより、不均一な研磨や局所的なたわみによって引き起こされる不良を早期に特定できます。
大型ワークピースへの適用とカットレス測定
次世代の半導体生産では、より大きなウェーハサイズの採用や異形ワークピースへの対応が検討されています。従来の接触式測定では、切断や加工を必要とする場合が多かったものの、光学センサならカットレスで全表面を把握することが可能です。工数を削減しながら、製品そのものを損傷しない検査手法として、高い評価を得ています。
計測基準や規格への対応
表面粗さや形状パラメータを評価するにあたっては、国際標準化機構や国内規格が定める基準を順守することが重要です。ISO 25178-2やJIS B 0681-2のような規格は、測定条件や手順を統一し、世界的に信頼性の高いデータを共有する指標となります。光学センサを活用する場合も、これらの規格に適合したシステムを選定することで認証取得や品質管理を円滑に進められます。
まとめ
精密かつ安定した計測技術は、先端半導体デバイスの生産性と品質を支える基盤として今後さらに重要となります。
半導体製造における光学センサを使った非接触測定は、ウェーハアライメントや形状検査など多様な工程で大きなアドバンテージをもたらしています。高度化するデバイスにはますます用途が広がり、厳格な規格や歩留まり改善を求める現場において、検査の迅速化と精度向上の両面で貢献が期待されます。
今後は、大口径ウェーハの採用や新素材の導入などに伴って、測定対象や課題がさらに複雑化していくでしょう。そうした中でも、非接触での計測技術は歩留まり向上とリスク低減に大きな役割を果たし、最先端の半導体製造プロセスを下支えし続けると考えられます。